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商品・技術情報[ ステンレスの冷間鍛造 ]

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ステンレスの冷間鍛造

ステンレスは優れた耐食性を持つ一方で鍛造加工が難しい素材として知られています。特に、ステンレス特有の性質から不向きとされ、多くは切削加工が一般的な選択肢とされてきました。しかし、ステンレスの鋼種によっては、鍛造加工もできる素材がありますので、そちらについて紹介いたします。

選ばれる理由③

なぜステンレスの冷間鍛造は不向きとされるのか?

ステンレスの冷間鍛造が敬遠される最大の理由は、加工硬化の特性にあります。特にオーステナイト系ステンレス(SUS304など)は、冷間での加工を受けると「加工誘起マルテンサイト変態」という組織変化を起こします。これは、本来は延性に富む非磁性のオーステナイト組織が、塑性変形によって極めて硬い強磁性のマルテンサイト組織へと変わる現象です。この特異なメカニズムが、ステンレスの加工硬化を他の金属とは比較にならないほど高めています。そのため、この性質が鍛造にとって極めて厄介なものになります。鍛造は金型で材料に強力な圧力をかけて成形しますが、叩くほどに硬くなるステンレスでは、金型側が耐えきれません。通常の金型ではたちまち摩耗・破損してしまいます。こういった技術的ハードルの高さが「ステンレスは鍛造に不向き」という定説の根拠となっているのです。

そのため、一般的には鉄にめっきを施すことが採用されています。ただし、これはあくまで表面的な対策です。使用中の傷や経年劣化でめっき層が破れれば、そこから母材の腐食は進行してしまいます。対して、ステンレスは素材自身が不動態皮膜を自己修復する能力を持っています。この素材レベルでの根本的な信頼性は、厳しい腐食環境や長期的な品質保証が求められる部品において、めっきでは得られない絶対的なアドバンテージとなります。
つまり、鉄+メッキでは叶えられない付加価値がステンレスには存在します。

鍛造と全切削の違い

ステンレス部品の製造で一般的な全切削と比較した場合、鍛造にはコストと性能の両面で明確な優位性が存在します。

①コスト:鍛造+切削 < 全切削
全切削は、製品形状によっては材料の大部分を切り屑として廃棄するため、歩留まりが悪化します。材料が高価なステンレス、特に鉄の3倍以上の価格にもなるマルテンサイト系や析出硬化系では、鍛造によるニアネットシェイプ化が、劇的なコスト削減効果を生み出します。

②強度:鍛造+切削 > 全切削
鍛造の最大の付加価値は、メタルフローの形成による強度向上です。金属内部の繊維状組織が製品の輪郭に沿って途切れることなく連続することで、応力集中を緩和し、部品の疲労強度を大幅に向上させます。全切削ではこの組織が切断されてしまうため、鍛造品のような強度は得られません。
③平滑な仕上がり: 取り付け面が平滑(フラッシュ)に仕上がるため、部品の省スペース化に貢献します。
④前工程での取り付けが基本: プレス機が必要なため、通常は曲げ加工や塗装の前段階で取り付けられます。電子機器の筐体や、自動車の内装部品・インパネ内部のブラケットなど、目に見えない部分で数多く使用されています。

鍛造に適するステンレス鋼とは?

選ばれる理由③

①SUS304Cu
SUS304Cuは、SUS304に銅を1~3%添加することで、冷間加工性を飛躍的に向上させたステンレス鋼です。Cuの添加はオーステナイト組織を安定させ、冷間鍛造時に問題となる「加工誘起マルテンサイト変態」を抑制します。これにより加工硬化が穏やかになり、標準のSUS304では困難な深絞り加工や複雑な形状の鍛造が可能となります。

②SUS304J1
SUS304J1は、特にネジやリベットなどの冷間圧造に特化して開発された日本独自の改良鋼種です。SUS304をベースに銅を添加することで加工硬化を抑制し、ヘッダー加工性に優れます。SUS304Cuと比べてニッケルの含有量が少なく、コストパフォーマンスに優れるのが特長です。このため、大量生産される締結部品に広く採用されています。ただし、クロムの規定下限値がSUS304より低いため、使用環境によっては耐食性の確認が必要です。

③SUS304J2
SUS304J2は、ニッケルの一部をマンガンに置き換えた省ニッケル系のステンレス鋼です。高濃度のマンガンがオーステナイト組織を安定させ、優れた延性を発揮します。この高い延性により、冷間鍛造における深絞り性や張り出し性が非常に良好です。加工硬化はしますが、その高い延性によって厳しい加工に耐えることができるのが大きな特徴です。

④SUSXM7
SUSXM7は、SUS304に銅を3〜4%と多めに添加することで、冷間圧造性を極限まで高めたステンレス鋼です。加工硬化が極めて少なく、冷間圧造用ステンレス鋼の中では最高レベルの加工性を誇ります。金型寿命の延長効果が最も高く、時効硬化のリスクも非常に低いため、安定した大量生産が可能です。その優れた性能から冷間圧造用ステンレスの代名詞的存在となっており、高強度・高品質が求められるネジやボルトに広く使用されています。

ステンレスの鍛造のことなら当社にお任せください

ステンレスは、耐食性という他に代えがたい大きなメリットを持つ一方で、その加工硬化の特性から鍛造が難しい素材とされてきました。しかし、ご紹介したように、SUS304Cu、SUS304J1、SUSXM7といった特定の改良鋼種は、銅 やマンガンの添加により、その加工性を飛躍的に向上させています。
「絶対的な耐食性と高強度を、コストを抑えながら両立したい」 「切削加工では不可能な、メタルフローによる究極の疲労強度を部品に持たせたい」

もし、貴社製品がこのような課題を抱えているのであれば、鉄+めっきでは実現できない、ステンレス鍛造品ならではの付加価値が、その解決策となるかもしれません。部品の形状、要求される強度、そして生産ロットの規模に応じて、最適な鍛造用ステンレス鋼種を選択することが、高品質かつコスト効率の高い製品設計への第一歩となります。

最適なステンレス鋼種・製造プロセスについてのお悩みやご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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